片岡喜彦写文集『本のある風景4』

片岡喜彦著 本のある風景4「労働者人生 本・人・心」

 今回出版した私家版「本のある風景4 本・人・心」は片岡氏が1985年から書評誌『足跡』にて書きためたものをまとめて出版したもので、今回が4冊目にあたります。当方にとって片岡氏の書評誌・自分史について手がけるのは初めてでしたが、片岡氏の兵庫県土建一般労働組合の定年記念ということもあって、写真作品「鉄路の安全を守る」のページを増補して・これまでの思索活動の集大成となりました。

 本好き、働く人が大好きな片岡氏が、学生時代からの思索、労働運動への憧憬、長男の死と裁判闘争を経る過程で、教条的ではない率直に人間そのものを見つめる独特の温かい人間観を確立されておられます。内容は、1章書評「本」、2章書評「人」、3章写真作品集「鉄路の安全を守る」、4章随筆「写真雑記」「定年まで」、5章書評「心」の5章立てとなっています。
2008年10月14日 『足跡』編集部発行 A5変形版338ページ 編集・印刷 編集プロダクション フジイ企画

片岡喜彦さんとの出会いについて
 片岡喜彦さんとのお付き合いは1989年ころ、ちょうど私の新大阪新聞での労働争議が解決し、その争議中にお世話になった印刷会社から独立したと同時だったような気がします。片岡さんは当時から兵庫県土建一般労働組合の教宣部で月刊の機関紙『建設ひょうご』の編集を担当しておられました。私はその編集のお手伝いをするようになって、かれこれ20年になります。その間には1995年の阪神・淡路大震災もありました。95年1月号は納品寸前に欠番となり、教宣部員も一人お亡くなりになりました。そんな大変な中、駐車場にプレハブを建てた仮事務所で即時に震災号外を発行したこと、また瓦礫となった亡くなられた教宣部員のアパートに片岡さんと遺品探しに行って愛読書を拾い集めたことなど、忘れられない思い出があります。一時期、機関紙担当を離れられたこともありますが、すぐ舞い戻られて、私にとっては結果的に片岡さんの定年まで機関紙編集でのお付き合いということになりました。

片岡喜彦さんの写真集について
 今回の「本のある風景」は当方にとって初めての書籍ですが、2004年に初めての写真集『造船のまちと人々』の出版を手伝わせていただいて以来、(フジイ企画にとって)これで4冊目の出版ということになります。  これまで片岡さんは『造船の町と人びと』(2004年)、『高架下商店街と人びと』(2005年)、『運南に暮らす人びと』(2006年)と立て続けに自分のテーマで写真集を出されてきました。  片岡さんがカメラを持たれたきっかけは1995年の「阪神・淡路大震災」の体験からで、「写真は記録だ」という思いからカメラを手にされたようです。でも、これまでお付き合いさせて頂いて感じたことは、片岡さんのテーマは一貫して働く労働者や生活人の生の姿で、市井の人々のくり返しの日常のシーンを生活人の目線に合わせて常にイキイキとした描くことでした。その視線は、焦点を当てた人々の営む個人の経験、思い、時間の流れをいかに一枚の写真に表現しきるのか、ということではなかったかと思います。時の移り変わりや町並みの変化も感じながら、そこに暮らす人々の心を今に留めていく営為は、貴重な仕事のひとつだと思います。

 



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