最後の『中野渡采配』に溜飲…ドラマ半沢直樹

 ドラマ『半沢直樹』が終了した。このドラマが高視聴率を更新していた理由が今一つ自分にはわからない。しかし印象に残ったシーンがいくつかある。その一つが最後の中野渡頭取の最後の人事采配である。

 最後の中野渡采配とは、大和田常務を平の取締役に降格させるだけにとどめ、一方、半沢直樹を2階級特進させた上で、大和田がもともと左遷しようと画策していた証券会社に出向させるというものである。

 小さな会社や関係する団体などで、常日頃いやというほど「人」の問題に悩まされる私たちもそうだが、企業社会のあり方を本気で模索する者にとって、経営者の持つべき方向性を垣間見た人も少なからずいたと思う。

 まず大和田常務の平取締役への降格は、ストーリーの中でも述べられている通り、人心を掌握する手法としてはかなり有効だ。もちろん経営者が経営者感覚としての人間観をもっていなければ、なかなかやれるものではない。でもこれは一つの政治手法に過ぎない。

 ただそれより圧巻だったのが、半沢への出向命令だ。もともと半沢は小企業経営者の息子であり中小企業の本来の立ち位置を知っていて、ドラマとはいえ、我々中小零細企業家の感覚と『期待されるべき銀行マン』への好感力を随所に表現し得た。

 ただこれまでの半沢の行動の原動力は私怨に基づくものであり、「倍返し」に見るストーリーの面白さのエッセンスはここにある。しかし中野渡はおそらく半沢の仕事の本質を別の角度で見ていた。最後の中野渡のこの采配は、武士の本懐を遂げさせた上は、新しい銀行のミッションに基づく社会性への回帰への道に連れ戻すこと…か。荒削りの半沢の面目躍如はコレしかない。

 これはドラマの面白さとは対極の、経営の新たなパラダイムに関わることであるから、『倍返し』のワクワク感を自身に投影させた視聴者は、あるいは『やっぱり企業に利用された』しがないサラリーマンという後味の悪さを感じたかもしれない。

 しかし、これが現実社会なら(現実ではないからこそ…か)中野渡は新時代のミッションを持つ経営者としての凄い手腕を見せたことになる。もしそうでないなら、大笑いの茶番である。であれば、これからの『仕事師』としての半沢のアイデンティティって何か…を鮮明にすることである。もし次回作への布石があるなら、おそらくここか…。


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